アメリカ・ニューメキシコ州公教育局(New Mexico Public Education Department、NMPED)が、教員の資格昇進プログラムに脳教育を正式導入します。
導入されるのは、脳教育の修士課程を運営する教育機関IBE(Institute of Brain Education、アリゾナ州)がNMPEDと業務協約を結んで開発したオンラインコース「自己調整および学習準備度の向上のための脳教育ベースの教室介入プログラム(Brain Education-Based Classroom Intervention for Self-Regulation & Learning Readiness)」です。
NMPEDは、教員の専門性向上と資格昇級のために「マイクロ・クレデンシャル(Micro-Credential)」プログラムを運営しています。これはコンピテンシーベースの積み上げ式コースで、教員の段階的な昇級を支援する仕組みです。今回の脳教育科目は、そのうちレベル2の教員が最高段階のレベル3へ昇級するための「APL II-III」課程で採用されました。
「APL II-III」は4つのマイクロ・クレデンシャルの修了を要し、うち2つは必修科目(社会性と情動の学習=SEL、州の教育関連法)、残る2つを選択科目のライブラリーから選ぶ構成です。脳教育科目は、この選択科目のライブラリーに新たに加えられました。正式運営は2026年10月から始まる予定です。
十数年にわたる現場での積み重ね
今回の採用は一朝一夕に実現したものではありません。NMPEDが脳教育を正式課程に組み入れた背景には、この十数年間ニューメキシコ州の現場で蓄積されてきた成果があります。
現地の脳教育講師たちは、脳教育が情緒調整力や学習意欲といった非認知的能力の向上に効果があるという考えのもと、2012年のサンタフェ・ボーイズ&ガールズクラブ(Boys & Girls Club)をはじめ、州立大学の教育学部、サンタフェ公立学校の校長・教員、モンテッソーリ芸術科学学校(La Tierra Montessori School for the Arts and Sciences)、州教育委員会などを対象に、脳教育の原理と実践活動を紹介し続けてきました。
ニューメキシコ州は、脳教育の導入に最も積極的な州の一つです。2017年には州下院議会が「脳教育の日」法案を制定し、脳教育の地域社会への貢献を公式に称えました。翌2018年には、NMPEDが選定した3校で脳教育のパイロットプロジェクトが始まり、これを機に現地講師らがニューメキシコ脳教育プロジェクトチーム(New Mexico Brain Education Team)を結成しました。
このチームは同年の春学期、パイロット校を直接訪問して授業を実施し、参加した児童・生徒の幸福感・集中力・自己肯定感の向上に効果があることを確認しました。2023年からは、公立学校の教員・職員を対象とした脳教育ワークショップも継続的に運営されてきました。
12週間・5コースのオンラインプログラム
こうした現場基盤の上で誕生したのが、今回のオンラインプログラムです。「自己調整および学習準備度の向上のための脳教育ベースの教室介入プログラム」は全12週間の課程で、教育界で注目される社会性と情動の学習(SEL)の実践的方法を、教員が自ら体得し教室で活用できるよう設計されています。
理論と実習を融合した5つのコースで構成され、①脳に基づく学習理論 ②脳教育の核心原理 ③自己調整(集中・感情調整) ④授業への適用 ⑤教員のセルフケアおよび家庭・地域社会との連携、という順序で進められます。
プログラム開発を統括したIBEのイム・ヘラン博士は、「過去15年間、個別の学校単位で行われてきた教員教育がオンラインプログラムへと拡張されたことで、より多くの教員が脳教育の哲学と方法を教室で実践できるようになりました」と、今回のプロジェクトの意義を語りました。
教員の申請受付は2025年9月に開始され、2026年10月から正式運営が始まる予定です。






