私は公園から始めました。37年前、30歳だった私は、早朝の公園に行きました。眠っている幼い2人の息子と妻が起きないように、そっと体を起こし、トレーニング服を着て公園に行きました。母岳山から降りてきたときは、私が命をかけて得た悟りを伝えるだけで、人々が受け入れてくれて、そうすると3カ月あれば天と約束したビジョンを達成できると思っていました。しかし、実際にその悟りを実践し、伝えようと直面した現実は、そんなに簡単なものではありませんでした。家長として家族の生計に責任を負わなければならず、悟ったからといって人々のほうから近づいてきてくれるわけでもありませんでした。
私のほうから人々に近づいていく必要がありました。人と出会える場所を探さないといけませんでした。だから、早朝に公園に行きました。そこは、何の制約もなく人々と出会える場所、自然が調和しているエネルギーの清い場所、何か自分に集中しようとする人々がやってくる場所だと思い、私は早朝の公園を選びました。私たちが暮らしている都市は、ほとんどの空間が私有地ですが、公園は、その中でも稀な公的空間です。また、毎朝公園を訪れる人は、希望を抱いて熱心に生きようとする人々です。
韓国の京畿道安養市にある忠現塔公園。私は人々と出会って悟りを伝えるために、ここに向かいました。空が白みだすと、1人、2人と公園を訪れはじめ、彼らはいつものようにただ歩いたり、それぞれに運動していました。私は、彼らに近づいて「何かお手伝いできることはありませんか?」と尋ねましたが、彼らはただ「結構だ」と手を振りました。
為す術もなく一人で丹田を叩きながら運動していると、ひとりの人が私に近づいてきました。見るからに体の不自由な人でした。彼は13年前に脳梗塞になったと話しながら、自分も健康になれるのかと尋ね、手伝ってほしいと頼まれました。その人が、私と社会と人類を生かすという私の夢とビジョンに招待した最初の人でした。彼が健康になるように手伝うことが、彼の体と心をヒーリングすることが、私には、私と社会と人類をヒーリングし、手伝うことだと思いました。彼は、私の悟りが社会と出会った大切な初縁でした。
その日から5年間、私は早朝の公園に行き、人々に真心を込めて心身健康法を指導し、弘益精神と人間完成の道を伝えました。冬が近づくと、翌春に会おうと約束し、しばし公園の早朝トレーニングを休むとき、人々は感謝のしるしだと言ってトレーニング服を1着プレゼントしてくれました。今、考えても、そのときが最も幸せな時間でした。何の心配もありませんでした。スタジオの家賃を気にする必要もなければ、教え子たちに対する責任の重みもありませんでした。
37年前に私が公園から始めた小さな弘益の実践は、今も続いています。私の代わりを数千名の国学気功の講師がしており、彼らは力強い声で早朝の公園を目覚めさせています。彼らも私のように自分の気づきを実践し、弘益人間に成長する場として公園を選択しました。国学気功は数十年間、心身健康法として多くの人々に愛され、昨年は大韓体育会の正式種目に選ばれました。
韓国だけでなく、世界10カ国でも公園で弘益の実践が行われています。アメリカでは過去7年間、公園を訪れた人々に様々な瞑想や教育プログラムを指導してきた功績を認められ、アメリカの国立公園局から「パイオニアアワード」を授与されました。10月には、ソウル広場に世界中から国学気功をしている人々が集まり、親睦を深め、地球市民の弘益精神を共有し、実践を約束する国際国学気功大会が行われます。
私は、国学気功の講師にいつもこう言います。「もしみなさんが5年間、雨の日も雪の日も毎日公園に行って人々に健康と幸せを伝えられたら、人生で願うことが何であってもみなさんは実現できます」 私にとって公園での5年は、過去37年間どんな苦労や危機の中でも、私と社会と人類を生かす道を歩んでこられた、内面を育てる時間でした。
私にとって悟りとは、最初から分かち合えるもの、実現できるものでした。伝えられない悟り、分かち合えない真理は、単に個人的な幻想に過ぎません。悟りは、最終目的地ではなく、出発点に過ぎません。神性は、すでに私たちに与えられています。弘益は人間の本性です。大事なのは、神性をもつ存在として、自分が直面している状況を正しく見て、どんな選択をし、その選択の結果に責任を負うかどうかです。
悟りが選択なら、その悟りを実践するのが弘益であり、弘益がヒーリングです。悟りを証明する方法は、実践以外にありません。悟りの価値は、健康と幸せと平和の実現にあり、人間性回復と自然回復にあります。そのため、悟りは自分をヒーリングし、家族をヒーリングし、社会をヒーリングし、国や宗教同士の対立をヒーリングし、人類をヒーリングし、地球をヒーリングできないといけません。
私は、今日も早朝の公園で、明るい笑顔で希望を伝えている国学気功の講師たちを応援しています。国学気功運動が社会をヒーリングし、更には人類と地球をヒーリングする、1億人の地球市民運動として成長し続けていくことを願っています。