自分の体とよく遊べばいい

昨年の10代の自殺率が1983年の統計開始以来最も高かったというニュースを見ました。2023年時点でのOECD加盟国の平均自殺率は人口10万人当たり10.6人ですが、韓国は27.3人で2倍をはるかに上回ります。1年間で1万3770人、1日平均35.4人が自ら命を絶ったのです。10~20代の自殺率と高齢者の自殺率は特に高くなっています。

韓流の波が世界中に広がり、今年のノーベル経済学賞受賞者たちは、韓国と北朝鮮を比較して韓国の成功を高く評価していますが、現実を生きる国民の心は苦しいばかりです。韓国社会が直面している分裂と対立は一層大きくなり、檀君以来最も豊かな時代に生まれた未来世代の不安は、むしろ最も高いのです。私たちが忘れていたことはいったい何でしょうか?

2024年、私たちは、土を踏まない子どもたち、つまり人とのコミュニケーションよりも画面を見ることに慣れている時代の中で現実よりもバーチャルの世界に多くの時間を費やす人類初の世代に会っています。その中心に物質文明の象徴であるスマホが位置しています。

大事なのは、スマホ中毒になって自殺にまで至るのは、脳がどのような状態なのかということです。何かに夢中になるのは、自分を失っている状態です。自殺は自尊感情が失われたとき、自分には価値がないと思うときに起こります。つまりは、脳が健康ではないのです。

農耕社会、産業社会、情報化社会を経て情報量は急増しましたが、脳の基本的な構造と機能は変わっていません。すべてがつながっている情報化社会の中で急増する中毒の本質は、結局のところ脳の主の座を奪われたことにあります。

人々は事実から目を背け、見えない情報で綴られた虚像を現実として受け入れています。果てしない競争に追い込む社会システムが存在する限り、自尊感情はこれからも低くならざるを得ないでしょう。自我喪失の時代を生きていく私たち一人ひとりが克服できることは何でしょうか?

私はその答えを「体」に見つけました。運動をすれば健康になることは誰もが知っている事実です。これからは、脳を健康にするという視点で「ブレインスポーツ」を提示します。今、ブレインスポーツを語る理由は、最も普遍的で簡単だからです。誰もが共感でき、自分で自分を愛するという気持ちで行う、それがブレインスポーツです。

自尊感情は自分で見いだすものです。自尊感情を失う時間を過ごすか、自尊感情を見いだす時間を選択するかを選ぶ権利は、自分にあります。教育者も親も、自尊感情を与えることはできません。自ら努力して得なければならないものであり、本当に自分の中にある自尊感情を回復するには、まず自分の体を動かさなければならないのです。

崖から落ちたとき、誰かがロープを下ろしてくれたとしても、それをつたって上がるのは自分の腕でしなければなりません。最低限、自分の体を持ち上げることができるようになったときに変化が始まります。これを踏まえて、私は懸垂をおすすめします。 一般的な懸垂ではなく、目的と原理が大事です。脳は、同じ情報でもどのように処理し自らどれだけ認知するかによって、まったく異なる結果をもたらすのです。

自分自身への信頼がなければ、懸垂を続けることはできません。ぶら下がってみると自己診断ができます。これは私が私を愛する時間です。自分の脳を目覚めさせ、自分の体の主は私だということを脳に教えるのです。両手を握りしめ、地球の重力に打ち勝って自分の体を持ち上げるのです。1回の懸垂、0と1は別世界との出会いです。

実体である体を変えなければ、心は虚像のようなものです。自分が作る自尊感情は永遠ですが、誰かが作ってくれた自尊感情はいつも不安です。脳のバランスが崩れ、過去の被害者意識や不安の中に陥ることになります。金、名誉、権力は、そのようなものです。しかし、自ら健康で自尊感情が回復した脳になると、周りを助けたくなります。

海外の多くの学者が、韓国は聖人が建てた国だと言います。弘益人間の建国理念そのものが聖人を作る哲学であり、神人合一という言葉の中に聖人の品性を持つという意味も含まれています。真似できない神聖な存在ではなく、自ら弘益を選択すると決心して実践する人です。

今、韓国に必要なものは何でしょうか?希望の種をどこからつくればいいのでしょうか?地球村の物質文明の限界が訪れた今、韓国が何を見せるかによって、世界は再び韓国に注目することでしょう。

過去40年間、私が歩んできた道は、簡単に言えば、自分の体とよく遊ぶ方法を伝えることでした。自分の体と呼吸し、自分の体と対話し、自分の体を感じる方法を伝えてきました。私たちの祖先は、天地人思想の中で体も心も鍛えた心身双修(そうしゅう)という修行文化を持った民族でした。「体から救え」というのは、仙道の最も重要な秘訣です。

私は韓国のすべての国民が懸垂を通じて脳が目覚めることをイメージしています。世界で最も脳をうまく活用する国になることを願っています。国連本部で開かれた国際脳教育カンファレンスで質問を受けたことがあります。人類が直面している危機を乗り越えるためにはどうすればいいのかと。人々はとても知りたがって私の返事を待ちました。私の答えは簡単でした。

「自分の体とよく遊べばいいんです」

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