年をとると私たちは、人生の様々な変化の経験から人生の道理や自然の理を悟る知恵を持つようになります。
研究結果によれば、老年になると脳の変化によって、気分をよくするホルモンであるドーパミンへの依存度が低下し、感情をうまくコントロールでき、衝動的になることが減るため、より賢明な意思決定ができるようになるといいます。
老年期に入ると、省察や思索の時間が増えます。
自分の生命が有限だと肌で感じられるため、これまでの人生を省察し、自分がこの世に何を残していくのかを真剣に悩みます。
また、物質的な成功と所有が人生のすべてではないということをすでに十分に経験した年齢なので、自分にほんとうの幸せと意味をもたらしてくれるものは何かを考えるようになります。
そのような意味において、老年期は人生のどの段階よりもスピリチュアルな感受性が発達する時期なのです。
呼吸に集中して瞑想し、長い冬の終わりに春を迎え若葉の芽生えた木を眺めながら、ふとこんなことを感じたことはありませんか?
私が感じている生命は、私の誕生や死と共に消える限りあるものではなく、私がいる前にも存在し、私が消えてからも永遠に存在するように思える感覚、
私は時間や空間を超えて無限で永遠な何かとつながっているという感覚、
足りないものは何もなく、ただ限りない感謝と平和が胸いっぱいに満ちている感覚…。
このようなスピリチュアルな感覚や経験も私たちの脳で起こる現象です。
脳はこの世で最も複雑で精巧でありながら、私たちには想像もつかないようなものすごい機能や作用をもつ器官です。
自身が真に何者かを問い、その問いに答えを出して本当の自分自身になっていくことが、脳に最高の意欲を与えられる、人生最大の課題であり、脳に与えられる最高のモチベーションです。
脳をよく使うためには、私が「脳の主」だという意識が必要です。
脳を見守るという意識が目覚めていると「主のある脳」、そのような意識がなくなると「主のない脳」になります。
脳の主として生きましょう。
あらゆる感情と情報で脳がぐちゃぐちゃになるまで放っておいてはいけません。
一指 李承憲著『人生120年の選択』