「自然脳」になりましょう

故チョン・ジュヨン現代グループ名誉会長に初めて会ったのは1980年代末でした。
その時、私は30代後半の青年でした。公園で5年間ブレインヨガを無料で指導した後、
1985年ソウル、新沙洞(シンサドン)に初めてスタジオを開設して2年ほど過ぎた頃でした。
当時私は寝る暇も惜しんで全国巡回講演会を行い、全国に12ヶ所のスタジオを開設しました。
その時に故チェ・ジョンヒョン「ソンキョングループ」(現SKグループ)会長を個人指導することになり、
チェ会長の紹介でチョン名誉会長に会って数ヶ月間個人指導をする縁を結ぶことになりました。

私は国内外で脳教育講演をする時、「自然脳」と「養殖脳」を分類して話します。
「養殖脳」というのは、制度教育の枠の中で習った限定された情報だけで脳を使うことです。
一方、「自然脳」というのは、自ら限界を設定せずに、自分のビジョンのために
脳の創造性を無限大に自由自在に活用する脳を言います。
「自然脳」をよく理解するために故チョン名誉会長の例をあげると納得できると思います。

チョン名誉会長のエピソードには、故郷から四回の家出のあげく、
仁川(インチョン)港で荷役の仕事をしていて米屋に就職した話があります。
米屋の配達夫に就職したことは当時彼の境遇を見ればとても幸運だったでしょう。
まず安定した職場でご飯を食べさせてくれるし、給料が1ヶ月に米1俵だったそうです。

しかし彼は米の配達夫として最も重要な技術である自転車に乗ることが
あまり上手ではありませんでした。店長の最初の質問は自転車にうまく乗れるかどうかでした。
彼は乗ってみたことはあったので、乗れますと答えたら、
彼の脚を見て「脚は長いな」と言い、雇ったそうです。
三日目、雨の降る日に初めての配達をすることになりました。
自転車をうまく乗れなかった彼は、倒れて自転車は壊れ、
配達する米と小豆袋は泥が付いてめちゃくちゃになりました。
幸いお店の奥様のおかげで危機はまぬがれましたが、彼はその日の夜、
先輩配達夫に米配達の技術と要領を習って、三日間ほとんど寝ないで配達の練習をしました。
まもなく彼は一度に米二袋を載せられるつばめのように敏捷な最高の配達夫になりました。

普通の人々の脳は分からない状況やできないことにぶつかると、
そこで停止し、限界を定めてしまいます。
チョン名誉会長の脳はそのような限界を自ら認めませんでした。
できないと言われると、いつも「それをやってみたのか」と尋ねました。
自分自ら限界を認めないで、自分の脳に挑戦し続け、
宣言した彼の脳は「天然産脳」の典型的なモデルです。

このような挑戦は自分自身の無限の可能性に対する信頼と成功に対する強い熱望、
そして意志から出てきました。「天然産脳」は成功するしかない脳です。
そのような脳は新しいもの、やってみなかったことに挑戦し続けます。
失敗を挫折として受け入れるのではなく成功のための一つの経験に、そして踏み台にします。

人間が生まれてから生きている間に習得する情報は大きく三つがあります。
それは両親から受けたDNAの中に含まれる遺伝情報、生まれてから本や教育、
多様なマスメディアなど外部から習得する知識情報、個人的な経験を通じて習得する体験情報です。
知識と体験を通じて脳に入る情報は今の「私」を決定する大きな役割を果たします。
では現在の「私」を形象化する情報以外のもっと根源的な情報はないのでしょうか。
人間として生まれることを祝福する情報、人間を人間らしくする情報が脳の中、
奥深いどこかにあるのではないのでしょうか。

私は人間の脳の中にもとから存在していた情報を「原始情報」と呼んでいます。
原始情報は根源的な知恵であり、皆に潜在された情報です。
人間を人間として正しく生きるようにし、私たちの良心が元々目指している所、
このような原始情報に対する自覚は人生の新たな気づきです。
脳の中の原始情報を活用して創造と業績を成した事例は歴史的に多くあります。
人類の歴史に足跡を残した人々はほとんどそうです。
でも一般的な人々は先天的に原始情報を引き出して使うことができず、
私たちの脳にそのような情報があることさえ知りません。
原始情報は既存の知識や経験では不可能に見える、
全く試みたことのないことに挑戦する時にも出てきます。

自分が成し遂げたい目標を定めてそこに集中すれば、誰でも原始情報に会うことができます。
それで夢がなければなりません。あなたの夢が高くて大きいほど、
脳では創造性を引き出すべき切実な動機づけがなされます。
そして脳はその夢をかなえるためにさらに活発に動きます。
もしあなたが脳の中の原始情報から創造性というプレゼントを得たいなら、
大きくて遠大な夢を持たなければならないでしょう。

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